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2021-01-27

ガン闘病中のフジタ“Jr”ハヤトに聞く「今年中に復帰したい。 できないなら… プロレスを辞めます」

脊髄腫瘍髄内腫瘍上衣腫に侵され、闘病を続けるみちのくプロレスのフジタ“Jr”ハヤト。昨年2度にわたる手術をおこなったが、懸念された下半身への障害はいまのところ見られない。この日も自らの足で立って見せた

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「自分のなかで(復帰のリミットを)今年って決めた。それができないんだったら…辞めます。好きだからこそ。でも、やらなきゃいけないこともあるし。プロレスってものがあったから、俺はここまでこれたので」

 ガン闘病中のフジタ“Jr”ハヤトの決意表明だった。

 2018年夏、脊髄腫瘍髄内腫瘍上衣腫に侵されたことを告白したハヤト。その体をむしばむ腫瘍は脊髄に付着しているため、外科的手術で完全に除去しようとすると、神経が傷つき、下半身に大きな障害を抱えてしまう可能性があった。

 命が何よりも大事。だが、ハヤトにとってリング復帰への思いも負けないぐらい重要な思いだった。

 医師もハヤトの思いを理解してくれていたため、当初は抗ガン剤による投薬治療をおこなってきた。闘病生活の支えになるなら、と一昨年12月には1日限定のリング復帰も果たした。


2019年12月13日、医師たちから許可を得て15分1本勝負の1試合限定の復帰戦を拳剛と戦った

 現実は厳しかった。闘志に火がついた心とは裏腹に腫瘍の肥大化。体に痛みやしびれが生じ、満足に眠れない日々があった。結果、昨年は5月と9月の二度に渡って、腫瘍の部分的除去手術をおこなった。

「手術をした初めの頃は左の太もも、オシリの下あたりはほとんど感覚がなかったんです。だけど、いまは少しずつ感覚が戻ってきて、杖を使って歩けるようにはなったので。波があって、1週間に一回ぐらいは一日中、車イスに乗ってる時もあるけど」

 1月某日、久しぶりに会ったハヤトは松葉づえをつきながらではあったが、自らの足で歩いて、取材場所まで来てくれた。連絡は取り合っていたものの、記者がハヤトと直接会ったのは昨年1月以来、1年ぶり。

 あの時は1日限定復帰による高揚感も確かにあったが、それ以上に久しぶりの試合による肉体的ダメージ、そして腫瘍の肥大化によって夜も満足に眠れない状況が続いていたため、その表情は曇りがちだった。


約3年ぶりのリングで、拳剛を相手に得意の蹴りを披露

 だが、久しぶりに会ったハヤトの表情は決して暗くなかった。道半ばの治療も、過酷なリハビリも続いているが、しかし左足に障害が生じるという事態は回避できた。そして、大好きなプロレスと格闘技がみちのくの神の子に力を与えてくれた。

「去年の12月に取材の話をくれたじゃないですか。あの時だったら正直、前向きな言葉は言えなかったと思います。たぶん、いつになるかわからないけど、俺は2021年で引退します。試合をするかどうかわからないけど、もうやめますって言ってたと思います」

 2度目の手術を終えた昨年9月以降は特に、ハヤトにとって先の見えない状態が続いていた。「痛いし、しんどいし。状況がわからないなかでもファンの人たちが『待ってます』って言ってくれる状況もきつかったし。やめたほうが楽になるだろうなとはメチャクチャ思ってました」。


「今日は完全復活ではなく、これからも闘病が始まるので、まずはそこをしっかり倒したい」とファンにメッセージを送ったフジタ“Jr”ハヤト

 大晦日、さいたまスーパーアリーナでおこなわれた格闘技イベント「RIZIN」。メインイベントでおこなわれた朝倉海と堀口恭司のバンタム級タイトルマッチ。この日が復帰戦となった堀口の胸をすく快勝劇と格闘技が持つスケール感がハヤトの心に火をつけた。

 年が明けて1月4日。新日本プロレス東京ドーム大会。グレート―O―カーンに勝利した棚橋弘至による「もう一回プロレスを盛り上げます。残りのキャリア全部使ってでも」という涙の決意表明。「プロレス界のトップの人が泣きながら、ああいう言葉を言った。俺が復帰したところで、みんなに勇気を与えられるかどうかわからない。だけど、1人でも何か感じてくれる人がいるなら、それが最後の仕事でもいいのかなって」

 今年35歳になるハヤト。'17年4月に左ヒザのジン帯損傷というケガをして以来、欠場が続いている。30代になってリングに上がったのは一昨年12月の1日限定復帰戦の1試合だけ。「もう時間は残ってないと思うし、今回がマジで最後のチャンスだと思うので」。悲壮な思いがある一方で「やっぱプロレスが好きだし、目立ちたいし、一番強くありたい。だけど、いまのみちのくプロレスを見てると、ムカつくというか。病院の先生とかにも『いまみちのくのチャンピオンって誰だっけ?』とか言われるんですよ。それってマジヤバいと思うし、復帰できたら、いきなりその時の王者とタイトル戦組んでほしいっすね。俺なら絶対勝てるんで」。

 プロレスへのアツい思いと、みちのくの現在へのもどかしさ。怒りをにじませながらまくし立てたハヤトの姿は、しかし不可能かと思われていたリング復帰に、もしかしたら…と思わせるほどエネルギーに満ちていた。
 病魔が相手だから安易なことは言えない。だけど、ハヤトは誓う、「このまま終わる気はないんで」。リングに戻るため、みちのくの神の子は懸命に闘い続ける。


ふじた・じゅにあ・はやと/ 本名、藤田勇人。1986年9月20日生まれ、東京都足立区出身。2004年12月3日、みちのく後楽園ホール大会における中嶋勝彦戦でデビュー。みちのくのエースとして団体内外で活躍。'17年4月、左ひざじん帯損傷の重傷を負い、欠場へ。'18年夏に脊髄腫瘍髄内腫瘍上衣腫を患ったことを告白した。みちのくの神の子。

【週刊プロレス2021年2月3日号掲載】

写真◎会田忠行、取材◎松川浩喜

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